最終回

「幸せへの結論」


 アパートに着いた五嶋課長は、中鉢君のバイクがある事に気づきました。ゆっくり部屋の前に。そっとドアを開けるとキスしている二人が見えました。またそっとドアを閉じました。

「結婚しよ。

 俺、お前が忘れられるんだったら何でもする。」

「でもあたし、五嶋さんのこと忘れられない。」

「俺、もうお前があの人のことで悩んだり苦しんだりしてるの見たくないんだよ!」

「あたしだって辛い思いしたくない。これ以上まわりの人傷つけたくない! でも五嶋さんじゃないとダメなの。」

 五嶋課長は部屋を背に、トボトボと歩き出していました。

 Sweet Season の前の橋の上で悩む五嶋課長。月を見上げます。真尋も月を見ていました。


 五嶋課長は千香子のいるマンションに戻ってきました。

「どうして戻ってきたの?」

「ここは俺んちだ。帰ってくるの当たり前じゃない。」

「思い出したんでしょ!」

「うん・・思い出せそうだったんだけど、なんか途中で消えちゃった。

 き・・消えちゃった??! 私が千香子だったらガクッときそう・・。もういいよ・・てなりそう・・。でも五嶋課長、これしかないでしょうねぇぇ。参ったなぁ・・て感じでしょうねぇぇ。


 荷物は運び出され、ガラーンとしたアパートの部屋から出て行く真尋。

 藤谷家ではお母さんが離婚届を書いています。お父さんは庭に桜の木を植えた日のことを思い出します。真彦はまだ赤ちゃん、お母さんの胸に抱かれていました。

 お母さんは「お願いします。」と離婚届の用紙をお父さんに差し出しました。

 藤谷家に帰って来た真尋、テーブルの上の離婚届を見てビックリ。庭の桜の木の前に座る父を見て、そばへ行きます。

「ちゃんと お母さんと話して。離婚なんかしないで。」

「自分が同じことして、初めてわかったの。お父さんの気持ちが。誰かを傷つけるのって自分が傷つくより、辛いもんね。」

 真尋は桜を見て言いました。

「お兄ちゃん今年も咲かせてくれないのかな。」

「お父さんのこと、まだ怒ってんだろ。」

「そんなことないよ。ね。」と幹に手を置きました。お父さんは自分の手を並べて「手、似てるな。」「そう?」「爪の形とか。」「ホントだ。やっぱ親子だね。」「ああ。」

「今まで・・ごめんね。あたし素直になれなかった。でも本当は、お父さんのこと大好きだった。」

「真尋・・。」

「こうやって話せるようになったのも、五嶋さんのこと、好きになったからなんだよね。」

 お父さんは真尋の頭をなでます。

「お父さんも・・真尋が大好きだった。」

 真尋は泣き、二人は抱きあいます。涙ぐむ お父さん。

 二人の頭の上に、桜の木が小さな蕾をつけていました。


 由真も両親のことを とても心配しています。おばあちゃまは夫婦のことは周りでとやかく言ってもダメ、放っておくように、と。真尋は由真に「待とうよ。信じて待とう。」と言うのでした。


 なんと、お父さんの会社(大手ゼネコン)が、倒産してしまいました。

 お母さんは庭の桜を見て、やはり植えた時のことを思い出していました。あら、と思い走って木の下に。花をつけているのを見つけます。

「・・・咲いた。」


 部屋のドア越しに、お母さんに会社の倒産を知らせるお父さん。

「心配するな。お前には迷惑かけないから。」

 そしてお父さんは、離婚届に署名したのでした。


 屋台のおでん屋にて。

「課長! 藤谷のこと ちゃんと考えてやって下さい! 」

「俺は一体何を忘れてるんだ? 中鉢、俺はどうすりゃいいんだ?」

 かなりカッコ悪いです、五嶋課長。酔っぱらってます。でもなんとなく憎めないんですよね。椎名桔平のキャラクターのせいでしょうか。

「やっぱ お前は頼りになるよ。藤谷も安心だ。幸せにしてやってくれ。」「課長・・・。」課長、記憶のない振りを忘れてついつい本音が・・。

 帰りのタクシーの中、真尋のを見つめる五嶋課長でした。


 真尋が家に帰ると、おばあちゃまが封筒を持って来て見せます。仙台の真治からの書留でした。開けてみると中には お金が(おお! 聖徳太子!)。同封された手紙には、こうありました。

『母はいつも「季節は待つものだ」と言っていました。藤谷さんが来てくれたことは まさにその通りで、これを機に新たな出発をする決心ができたようです。母は再婚することにしました。きっと幸せになると言ってます。本当にいろいろと ありがとうございました。』

 お金は、もう一度会えるようにと願いをかけて、二十年間どんなに困っても手をつけなかったもので、お返しします、とありました。おばあちゃまが彼女に渡したお金だったのです。

「季節は待つものだ・・て、・・そうかもしれない。」

「あなたには・・まだまだ一杯 時間あるんだもの。」

 その時テレビで、お父さんの会社の倒産のニュースが流れました。二人は驚きます。そこへお父さんが帰宅。

「・・・つぶれちゃったんだ。」


 藤谷家、家族勢揃い。

「俺は出ていくから。」と離婚届を差し出すお父さん。

 仙台の人 結婚するんだって、とお母さんに言う真尋。良かった、とお父さん。

「こうなったら、離婚するしかないでしょ。俺は父親としても、夫としても失格だ。」

「あなたは・・会社が倒産したから離婚をするんですか? もし会社がうまくいってたら、このままの生活を続けるつもりだったんですか?

あなたの気持ちはどうなんですか?」

「お父さんはどうなの?」

「お父さんは・・お母さんは凄い人だと思うから離婚したくないと思った。こんなお父さんを、何も言わずにずっと支えてくれた。」

 作ってしまった溝をどういうふうに埋めればいいか分からなかった、とお父さん。お母さんは、お父さんが償いで戻ったことが寂しかった、と。

「やっと分かったんです。あなたにとって私は、ずっと重荷だったんだって。責任だけで縛りつけちゃいけないんだって。」

「そんなわけないだろ! 責任は取りたいから取るんだ。もし本当にどうでもいいと思ってたら結婚なんかしなかった。戻ってもこなかった。俺はお前を・・選んだんだ。お前が大切だから・・好きだったから・・。

 三十年間・・支えてくれて ありがとう。」

 お母さんは離婚届を破ります。

 安堵する娘達。おばあちゃまも。

「ごめんなさい・・。」

「一緒にいたい、こんな俺だけど。もう一度やり直してくれ。」

 お母さんは泣いてしまいます。おばあちゃまも「真也さん・・、娘をよろしく お願いします。」と言って泣いちゃいます。頷くお父さん。皆 泣いてしまいます。

 その時、おばあちゃまが庭の桜に気がつきます。

「・・咲いた。桜が咲いた。」

 皆 庭に出ます。桜の木に、いくつもの花がほころんでいました。

「お兄ちゃんが喜んでる・・。」

 お父さんとお母さんは手をつなぎました。家族皆の手をつながせる由真。花びらが舞う中、桜の木の下で皆で手をつないだのでした。家族が再生した瞬間でした。



 空港。五嶋課長が千香子と香港に発つ日、課の皆で見送りに来ています。冒険には必ず終わりがある・・なんて、五嶋課長の挨拶を聞く真尋。

 一人一人挨拶をしていき、真尋の番に。

「あの・・お体に気をつけて・・ありがとうございました。」

 真尋は挨拶が済むと、その場から かけ出して行ってしまいました。

 一人で飛行機の離発着を眺めていると、真尋を呼び出す放送が聞こえてきました。出発ロビーに行ってみると、五嶋課長がやって来ました。

「これ・・君のだろ。」との付いた お守りを差し出します。そして、真尋にキスをしました。お守りを渡して、そしてすぐ歩き去る五嶋課長。驚いていた真尋はを握りしめ、微笑むのでした。

(これって・・・俺を待っててくれ、てことなんでしょうか・・。またしても ちょっとズルイぞ五嶋課長。普通は待っていてはくれないよ。離してしまったら もうダメなのよ。)



 三年後。

 藤谷家の人達は皆それぞれ頑張っていて、うまくいっていて、幸せそうです。真尋は・・花屋、て言うとちょっと違うのでしょうか。フラワーアレンジメントなのかな? 花を扱う仕事をしています。撮影スタジオに花を届けて、中で手伝いをしていると、千香子に声をかけられます。

 撮影が終わった後のスタジオで二人は話します。

「明良のこと待ってた?」

 あたし達 離婚するの、後悔はしてない、と千香子は言いました。ラジオから流れる「Sweet Season」を聴いて、

「甘い季節・・・若い時だけのものなのかな。」「そんなことないと思います。」「そうかな?」「はい。」「ありがと。」

 千香子は今晩の飛行機で五嶋課長が帰ってくる、と教えてくれました。

「彼あなたのこと待ってるわ。行ってあげて。あなたとの思い出の場所。今なら不倫にはならないわよ。」


 家に帰りかけた真尋は、いつもの坂道で引き返し、走り出します。Sweet Season に向かって。

 Sweet Season の店内は人でごったがえしています。「五嶋さん!」と叫びますが、ガヤガヤしていて これじゃとても見つけられない。真尋はマスターに手伝ってもらって流れていた音楽を止めてしまいます。「五嶋さん!」と叫び続ける真尋。お客は怒ってブーブー。

 そして、見つけます。『十戒』の、モーゼの前で海が割れて道が開けたシーンのごとく、真尋の前で客達が割れて道が開け、その先には五嶋課長がニッコリ・・!! 真尋は かけ寄って抱きつきます。周りのお客達も喜んで やんややんや。

(この場面って、あんまりこのドラマっぽくなくて ちょっと気恥ずかしいです・・。ノベライズではこんな派手な場面はないらしいです。)


 藤谷家の前に真尋と五嶋課長が。ご挨拶に来たようです。

「緊張してるの?」「当たり前じゃないか。」

「冒険の終わりには、何があるの?」

「二人の生活だ。」

 手をつないで玄関に向かう二人。



 そしてエンディング。五嶋課長と藤谷家の人たちで、お兄ちゃんの桜の木の下でお花見です。お重にビール。すごく楽しそう。満開の桜を見つめ、幸せそうに微笑む真尋でした。


 




「冒険の終わりには、何があるの?」て、この台詞、雰囲気は明るいのですが、真尋の少しだけ不安な気持ちが表れているような気がします。誰だって、思いますよね。一歩踏み出す時は。ましてや冒険好きの五嶋課長が相手ではなおさら。それでもこのエンディングはとても幸せそうで、重いシーンの多いドラマでしたからねー、とても嬉しくなったんです。

 ああハッピーエンドで良かった・・。

 真尋ちゃん お幸せに・・。

2002/10/3



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